今年も、伝所鳩の別注はんてんができました。
脈々はんてん、暖々はんてん、深々はんてん。伝所鳩ではこれまで、豊岡の季節や風景から名前をつけて、宮田織物に別注のはんてんをつくってもらってきました。毎年一枚ずつでしたが、今年ははじめて5つの柄をつくりました。そのうちの一枚が、この「穂波(ほなみ)はんてん」です。
麦秋とは、麦の穂が実って刈り入れを迎える、初夏のころのこと。麦にとっての実りの秋、という意味の言葉です。麦は秋に種をまき、冬の寒さを土の上で越えて、ようやくその季節を迎えます。この名前は、宮田織物が生地につけていたものをそのままいただきました。
深い赤の地に、白い絣の短い線が縦に連なっています。畝に沿って並ぶ麦の穂のようにも、静かに降る雪のようにも見える柄です。ところどころに織りの違う部分があって、同じ赤の中に凹凸と濃淡が生まれています。5枚の中でも、織りの細かさがいちばんよく分かる生地です。
宮田織物は、福岡県筑後市で1913年に久留米絣の工房として創業した織元です。糸選びから織り、縫製までを自社で手がけ、はんてんは一針ひと針、手でとじて仕上げています。伝所鳩が毎年お願いしているのは、部屋着にとどまらず、外にも着て出たくなる生地と柄があるからです。
衿は黒の別珍、裏地は山吹色。羽織ったときに内側からのぞく色が、表の赤をいっそう温かく見せてくれます。
雪の多い豊岡では、冬のあいだ、家の中でも外でも羽織るものが欠かせません。深みのある赤のこの柄なら、外に着て出ても様になります。近所への買い物くらいなら、コートを出さずにこれ一枚で。夜は家に帰って、ストーブの前でそのまま。伝所鳩の店頭では、5枚すべてを実際に羽織って比べていただけます。ご自分用にも、冬の贈りものにもおすすめです。