今年も、伝所鳩の別注はんてんができました。
脈々はんてん、暖々はんてん、深々はんてん。伝所鳩ではこれまで、豊岡の季節や風景から名前をつけて、宮田織物に別注のはんてんをつくってもらってきました。毎年一枚ずつでしたが、今年ははじめて5つの柄をつくりました。そのうちの一枚が、この「穂波(ほなみ)はんてん」です。
刻々とは、時間が少しずつ、絶えず過ぎていく様子のこと。山に囲まれた豊岡の盆地では、日が山の向こうに落ちてから暗くなるまでのあいだ、空の色がみるみる変わっていきます。赤から紫へ、紫から墨色へ。目を離すと、もう違う色になっています。
この生地は、その夕暮れの空に見えました。えんじと墨色の四角が、大きさも濃さも少しずつ変えながら並んでいます。同じ赤でも明るいところと沈んだところがあり、細かな織りの線が入った升目もあります。布を継ぎ合わせたようにも見える、深みのある格子です。
宮田織物は、福岡県筑後市で1913年に久留米絣の工房として創業した織元です。糸選びから織り、縫製までを自社で手がけ、はんてんは一針ひと針、手でとじて仕上げています。伝所鳩が毎年お願いしているのは、部屋着にとどまらず、外にも着て出たくなる生地と柄があるからです。
衿は黒の別珍、裏地は山吹色。羽織ったときに内側からのぞく色が、表の赤をいっそう温かく見せてくれます。
雪の多い豊岡では、冬のあいだ、家の中でも外でも羽織るものが欠かせません。落ち着いた色合いのこの柄なら、外に着て出ても様になります。近所への買い物くらいなら、コートを出さずにこれ一枚で。夜は家に帰って、ストーブの前でそのまま。伝所鳩の店頭では、5枚すべてを実際に羽織って比べていただけます。ご自分用にも、冬の贈りものにもおすすめです。